そんなにしんどいのか?
だったら、早くベッドに……
「……帰らないで」
「え?」
ぽつり、と呟かれた言葉に俺は自分の耳を疑った。
帰らないでって言った?
聞き間違い?
「も、すこしだけ……、一緒にいて……」
熱でとろんとした潤んだ瞳で、なおかつ上目遣いで見てくるのはさすがにズル過ぎる。
今ここですぐに押し倒していない自分を褒めたい。
「でも、柚音ちゃん熱が」
「寂しい……ダメ?」
コテン、と首を傾げてたずねてくる彼女の破壊力は恐ろしい。
これを無自覚でやっているからもっと恐ろしい。
「はあー……ほんと何されても知らないから」
それだけ言うと、柚音ちゃんの白くて細い手を引いて、部屋の中に入った。
柚音ちゃんの部屋に入るのは初めてあった日以来で、彼氏としてくるのは初めて。



