「あの、」
「俺、帰るわ。助けてくれてさんきゅー」
名前だけでも教えてもらおうと思ったのに彼はわたしの言葉を遮って足早に出ていこうとする彼。
「あ、ちょっと待ってください!これよかったらどうぞ!」
急いでキッチンに置いてあるクリームパンを取って彼に渡した。
彼は気づいていないだろうけど、寝ている間に何度かお腹が鳴っていた。
だから、きっとお腹が空いてるだろうって思ったんだけどさすがに迷惑だったかな……?
「なに、これ」
「あ、クリームパンです!駅前で人気のパン屋さんのやつなのでとっても美味しいですよ!」
「……」
「も、もしかして甘いの苦手でした……?」
クリームパンをじっと見つめて固まっている彼に問いかける。
当たり前だけど、好みなんて知るわけもない。



