「ちょっとからかいたくなっただけ」
『ほんと善くんのバカ!あぽ!マヌケ!』
次々に俺の悪口を並べる彼女。
それでも、電話を切らないのが柚音ちゃんらしい。
「好きだよ、大好き」
『っ、』
不意打ちの言葉に彼女は照れているのか返答がない。
あんなにさっきまでポンポンと言葉を発していたのに。
まあ、すぐ照れちゃうところも好きなんだけど。
「ご機嫌は直りましたか?お嬢様」
『ズルいよ、不意打ちなんて』
「作戦成功」
なんて、笑っていると
『ねえ、善くん』
と、可愛らしい声に名前を呼ばれた。
「ん?」
『すぐそこにいるってわかってるのに会えないってなんかもどかしいね』
その声はなんだか寂しそうに聞こえて、俺はソファから立ち上がり、ガラッとベランダの窓を開けて外へ出た。
ぶわりと風が吹いて、髪をゆらりと揺らし、顔にあたる風が心地いい。



