「離して……っ」
こんなところに連れてきてどうするつもりなの?
どうせわたしはからかわれてるだけなんだから。
わたしはチョロいから君のこと好きになっちゃったじゃん。
だから、こんなに胸が痛いんだよ。
「やだ」
引き止めないで。
わたしの方こそ期待しちゃうから。
「わ、わたし帰るから……!」
「なんで勝手に帰んの?」
「だ、だって……」
これ以上、仲良さそうな二人を見たくないから、なんて言える訳もなく押し黙っていると、ふわりと善くんの甘い香りとあたたかい体温に包まれた。
こういうときに抱きしめてくるなんてズルいよ。
振り解けないじゃん。
「あのさ、手帳見ちまった」
「え?」
手帳ってわたしのやつですか……?
あの、善くんのタイプをまとめたやつが書かれた手帳ですか!?
それは緊急事態すぎる。
まさか本人に見られるなんて恥ずかしくて死ねる。



