「だからさ…。好きな人の存在って、デカいんだよ」
「…うん」
それはあたしもよく知ってる。
先生に助けられてるもん、いつも。
「百瀬も…もし、好きな人や憧れの人がいたら、その人のために頑張ってみたら?」
好きな人…。
憧れの人…。
ぜんぶ、ぜんぶ先生だよ。
先生のことしか思い浮かばない。
あたしはこんなに先生ばっかりなのに…。
先生は、今でも飛鳥さんのことで頭がいっぱいなんだね。
「…うん、ありがとう、先生」
もうね。
なんかね。
はじめての挫折。
大人の女性には勝てない。
…分かってるのに、諦めつかないなぁ。
だって。5年も前に別れた人のこと、今も引きずってるなんて。
先生らしくないし。
なんか悔しいし。
だから。
…だから。
「あたし、先生のために頑張る」
そう言って立ち上がったら、先生は困ったように笑った。
先生が、今の言葉を聞いて…。
“先生が好き”
“先生が憧れ”
どっちの意味で捉えたのかはわからない。
…もう、我慢してばっかりはいや。
先生、好き。
飛鳥さんのこと、もう考えないで。
忘れなくてもいい…。
でもちょっとくらい、あたしのことも見てよ。



