「…先生は昔から運動好きだったから、あたしの気持ちなんかわかんないんだ…」
体育教師になっちゃうくらいだもん。
あたしが口をとがらせながら言うと、先生は首を傾げた。
「俺も昔は嫌いだったけどな」
「…えっ」
「中学くらいまでは」
全然想像つかない…。
今は、あんなに楽しそうに運動してるのに…。
「体育の先生に無理矢理参加させられるのが嫌だったなぁ」
思い出を語るみたいに、遠い目をする先生。
あたしと…同じ?
「その経験もあるから、俺は無理矢理運動させたりはしない」
「…うん」
確かにそうだ。
先生はいつでも優しく、やりたくないって言ったら見逃してくれた。
…先生に救われてた。
いつも。
「変われたのは高校入ってからだよ」
「…なんで、変わったの?」
ざわ。
胸が、嫌な音を立てた。
なんだか…聞きたくないことを聞いてしまった気がする。



