壇上から降りて職員席に座ったあとも。
あたし、先生から目が離せなかった。
教頭先生の司会、PTA会長の挨拶、ぜんぶ耳に入ってこないくらい。
毎日、先生しか見えてない。
気づいてるかな?
普段は白Tに、青いジャージをゆるっと羽織ってるだけ。
チャックは開けっ放しで、白いラインが入ってる。
でも今日は、始業式だから。
きっちりスーツ着てる。
…似合わない、って言いたかったよ。
先生、何着ても似合う。
ずるい…。
さっきから隣の隣の女子が、「今日の先生スーツだ、かっこいー」なんてキャーキャーしてるよ。
なんで先生、そんなにモテるの?
あたし、誰にも見られないように少しだけ頬をふくらませて拗ねてみた。
そしたら、先生と目が合ってね。
『 前 向 け 』
口パクで、そうやって言われた気がした。
拗ねてた気持ちなんかどっかにバイバイ。
やっぱり先生は、魔法使い。



