「はぁ? 俺は大人だから、お前らより勘は鋭い方なんだけど」
大人とか…関係ない。
あたし、子供かもしれないけど…。
先生の隣に立てるように頑張ってる最中なの。
だから、そんな突き放すようなこと言わないで。
「だいたい先生はぁ!」
茉白が続けて文句を言おうとしたとき。
突然、先生に向かってバスケットボールが勢いよく飛んできた。
驚いて視線を一点に集めるあたしたち。
そこにいたのは…。
「おい! 急に投げたら危ないだろ!」
先生の怒る声。
乃蒼が…べって舌を出していた。
な、なんで?
訳分からなくて頭が混乱。
「先生、女子に媚び売ってんなよー!」
「売ってないわ!! 人に向かってボール投げちゃいけませんって習わなかったのかぁ?」
「じゃあドッジボールはどうなんだよ、先生のばーかっ」
えぇ…?
今日の乃蒼、ちょっと好戦的。
でも…一年間見てきたから分かる。
あれは…ちょっと浮かれてる顔だ。
球技大会、楽しみにしてたもんね。
先生もその挑発に乗って、乃蒼のほうへ走っていってしまった。
あーあ…もうちょっと話したかったなぁ。
「乃蒼くんったら、あんなに嫉妬むき出しで情けないやつ!」
とか。
茉白が言ってたけど…。
嫉妬って?
もしかして、乃蒼も先生のこと…?
いや、いやいや!
…流石にそれは、ない、よね?
あたしは変な想像をかき消して、目の前の球技大会に集中することにした。