「ね…ねぇ、先生」
「んー?」
あのね。
ワガママ言うよ。
「寄り道したい…」
まっすぐ帰りたくない。
先生と一緒にいたい…。
信号待ち。
何も言わずにあたしを見下ろす先生。
…やっぱり、迷惑だよね。
「あ、で、でも……ダメなら、全然…」
涙目になりながら撤回しようとすると、信号が青に変わってアクセルを踏んだ先生が口を開く。
「行くか。展望台」
「え……っ」
「夜景見ようぜ」
「う、うん…!!」
嬉しくて涙が溢れそうだよ…。
先生はあたしを喜ばせる天才。
夜景って…まだこんなに明るいのに?
先生、へんなの。
でも嬉しいからなんでもいいや。
「おい、泣くなよぉ。俺が泣かせたみたいじゃん」
「先生が泣かせたんだよ…」
「え!? 寄り道したいって言ったのは百瀬なのに!?」
うん…。
先生、あたしのことなんにも分かってないね。
もっと知って。
あたしを、女として意識して。



