( 弥生SIDE )
◎ ◎ ◎
6月中旬。
雨が降ったので今日の体育は室内。
バスケットボール。
運動キライだからね。
あたし、体育館の隅っこで座っとく。
たまに先生と目が合って、『お前も動け』って口パクされてる。
…気がする。かわいい。
「んー…シャワー浴びたい…」
「お疲れ様、茉白」
さっきまで試合に参加してた茉白が、あたしの横に腰をおろした。
汗がたくさん。がんばったね。
男の子たち、茉白がかわいいって噂してたよ?
「次! 弥生呼んでこいって、先生が」
「…えー…」
でも。
ホントはちょっと嬉しい。
先生、あたしのこと呼んでくれたの?
…大好き。もっと呼んで。
あたし、先生のところだったらどこへでもいくよ。
「せんせ」
「はい、お前は向こうのチームな」
先生のほうを向いたままのあたし。
両肩を持って、くるってコートのほうを向かされた。
…もう。
軽々しく、触んないでよ…。
うるさい心臓をごまかすみたいに、あたしはチームメイトに笑顔を振りまいておいた。
「頑張ろうね、百瀬さん」
…うん。頑張る。
先生のため。