『一緒にテスト勉強、しよ?』
俺、小さくため息ついたよね。
『…いいけど』なんて素っ気なく言っちゃって、本当はめちゃくちゃ浮かれてたくせに。
百瀬弥生って、マジでどうしようもない。
小悪魔だし。鈍感だし。天然で……俺の気持ちには、もうずっと気づかなさそうだし。
好きになれとは言わないからさ。
せめて、男として意識してよ。
…いや、嘘。
やっぱり、好きになって。
俺のことだけ見てほしい。
報われないって分かってんのに、毎日欲張りになっていく。
「乃蒼ー?」
前のほうから弥生に名前を呼ばれてハッとした。
好きな女とのデート中にぼーっとするとか…。
兄ちゃんにバレたらしばかれる。
「勝手にふらふらすんな」
とか言って、また手つないで。
いつ告白すんの? 俺。
毎日、毎日。
弥生が俺の彼女だったらなぁ…って、妄想するだけ妄想して。
結局、行動に移す勇気は、未だに出そうにない。
「じゃあ、あたしの手、離さないでよ」
…だってさ。
弥生って、ホントに救いようのない小悪魔。