【完】遊佐先生の甘い熱





『あした、土曜じゃん?』


「うん、そだね」


『遊び行かね?』





遊び?
確かにあしたは土曜だし。
あたしはヒマだけど。



…なんで急に?
脈絡って知ってる? 乃蒼。





「どこ行くの?」


『ボウリング』





あたし、思わず吹き出した。
男女ふたりでボウリング!
やばい。シュールすぎ。





『いや、あの! 1ゲーム無料券が余ってて…』


「あはは、いーよ。行こ」


『まじ…? お昼ご飯はどうする?』


「んー。食べてから集合にしよっか」






あたしの提案に、乃蒼は『了解』とひとこと。
午後からの予定だったら起きれるかな。





『じゃあ、明日14時集合な』


「うん。バイバイ」


『おー』





乃蒼からの電話を切った。
雨、降らないといいなぁ。





「なんの電話だったの?」


「あした、遊ぼうだって」





キッチンで作業するお母さんが聞いてくる。
お兄ちゃんは興味なさそうにスマホゲームをしてる。
妹の交友関係にちょっとくらい興味持とうよ?





「あら。彼氏?」


「断じてちがう。ただの友達ー」





お母さん。
そんなことで「なーんだ」って残念そうな顔しないで。



女子高校生の恋バナみたいな反応、やめて。




あなたの娘、未だにひとりも彼氏できたことなくてごめんね。
たぶん、高校卒業するまではできないと思う。



先生のことしか見えてない。
…あいにくね。





はぁ、と小さめにため息をついて、あたしはテレビの画面をぼーっと見ることにした。