「百瀬」
おいで、って手招き。
いいの…? 邪魔でしょ、あたしなんか…。
「あ、弥生ちゃん…」
気まずそうに俯くクラスメイトの女の子。
なんで? やましいことがあるの?
でも。
一目見てわかった。
好きなんだね…先生のこと。
「邪魔してごめんね」
「何言ってんだぁ? 邪魔なんかじゃないだろ!」
先生は…優しい。
誰にでも、平等に。
あたしだけ特別なんて、到底無理なのにね。
苦しいよ。
先生…。
「なに、してたの」
「鈴木が日直だから、日誌書き終わるまで待ってたんだよ」
日直。
それを聞いても、心のモヤモヤは晴れない。
ワガママかな? 先生。
だって普通、書き終わるまで待つとか、しないもん…。
優しすぎるんだよ、先生は…。
「ご、ごめんね、弥生ちゃん。すぐ書き終わるから…」
なんのごめん?
謝ってほしいわけじゃない。
だって、先生はみんなのもの。
あたしが独占していいわけないもん。
…自分では、ちゃんと分かってるつもりなのにな。
だから、ちょっと無理して笑った。
「いいよいいよ。あたしもう帰るね」
「え? う、うん…また明日」
「先生もバイバイ」
ふたりに手を振って教室を出た。
あたしがひとりになるまで、先生はなにも言わなかった。
…挨拶くらいしてくれてもいいじゃん。
先生のバカ。



