遅刻指導担当してる、あの人。




遊佐泰志(ユサ タイシ)先生は、去年のあたしの担任。
今年も同じだといいなぁ...。




「おはよ、せんせ」


「おはよ、じゃねーよ。始業式から遅刻とはいい度胸だなぁ」




先生の元へ歩み寄ると、あたしの大好きな呆れ顔を見せてくれた。



先生を見上げて見とれてたら、
大きな手が伸びてきて、きゅっと目をつぶる。




「頭にサクラつけて。呑気だなぁ、お前はいつも」




桜...。
取ってくれたんだ。



一瞬、あたしの髪に触れた先生の手。
...ドキドキして、死んじゃいそうだよ。




「つか、今度こそ髪染めただろ、百瀬!」




何回聞いたかわかんないセリフ。
腕を組んでえらそーに。
先生モード? ぜんぜんこわくない。





「染めてないもん。地毛だよ、地毛」




あたしは生まれつき髪の色素が薄いから、ちょっとだけ茶髪。



それをたびたび『今回こそ染めたな〜?』って言われるんだけど、本当は疑ってないの、知ってる。