「百瀬はよくボールを顔面で受けるなぁ」
もうあの光景思い出したくないからね。
わざとそういうこと言うの、やめてね。
「…やっぱり、運動嫌いかも」
上半身起こして。
膝を抱えて拗ねてみれば、先生は楽しそうに笑う。
…でもね。
先生のそんな笑顔見れるの、嫌いじゃない。
「ゆっくりでいいよ。俺の体育は好きだろ?」
「うん…」
「じゃあ問題ない。百瀬が体育まで嫌いにならないように頑張らなきゃな」
先生。
あたし、先生が担当してくれてる限り体育嫌いにならないよ。
むしろ好き。
先生が体育してる姿、大好き。
「俺がこうして先生としていられるのは、百瀬の存在がでかいよ」
…そっか。
あたしがいた方がいいんだね、先生は。
「いた方がいいんじゃなくて、いなきゃダメ。百瀬しか無理」
…ふふ。
先生、大好きじゃん、あたしのこと。
「信じられないくらい好き。…弥生ちゃん」
「…泰志?」
「あーっ、やっぱむり! 学校で聞くと耐えらんねぇ」
じたばた悶えてる先生、かわい。
むりなの? じゃあもっと言ってあげる。
誰かをいじめたいなんて気持ち、はじめて知ったよ。



