「コーヒーできたよ、こっち先生の」
「…うん」
マグカップを持ってテレビの前に移動する弥生。
なんだ。どうして弥生が俺を意識してないのかって、答えは簡単だった。
「…せんせ?」
俺も並んで机の上にマグカップを置いて。
弥生が両手で握っていたマグカップは、俺が弥生の手から奪って机の上へ。
「弥生。俺、先生じゃないよ」
「…え? でも、先生は先生…」
「じゃなくてさ」
なんで気づかないの。
弥生のそういう鈍感なとこ好きだけど、俺も待ってあげられないよ。
…なんか、いろいろとむりだよね。
「泰志って呼んで、弥生ちゃん」
……好きすぎて、無理。
弥生がこの呼び方に弱いのも知ってる。
”弥生”には慣れたかもしんないけどね。
俺、優しくないよ。
ダサい大人でごめんな?
でも、弥生の前では我慢とか、駆け引きとか、できない。