( 遊佐SIDE )




◎ ◎ ◎




「おじゃましまーす」




のんびり挨拶をして家に上がり込む後ろ姿を見て、目を細めた。




大事な生徒である百瀬弥生と付き合って、一か月。
進展はゼロ。



普段、学校でしか関わらないし当たり前。

先生と生徒なんてそんなもん。




…でもさぁ、コイツ。
本当に俺のこと意識してんの?





「コーヒーでいい?」


「うん」




嬉しそうににっこり弧を描く弥生のくちびる。
…キスしたい。



そんな不純な欲望をかき消して、むりやりキッチンに立つ。





「…わ、コーヒーミルあるの?」





ソファに座りかけた弥生が、こちらに気づいて目を輝かせる。
興味津々、という感じで俺の隣に立った。




近い。
…近いよ、弥生。



なんか当たってる。
いろいろ。




「ね、あたしやりたい!」


「…いいよ」




こんな意識してんの、俺だけ?
…家にまで上がり込んどいて、俺のこと先生として見てるだろ。