「全然進んでないじゃん。俺、待ってたんだけど」
「…ごめんなさい」
悪い子だから。
素直に謝っとく。
「はぁ…怒ってないからな」
「ホント…?」
「うん、ただ…俺が、百瀬に会いたかったから、寂しくて拗ねてた」
え…えぇ?
なにそれ、超かわいい…。
今ね。
胸、きゅうんって締め付けられた。
学校だと、誰が見てるかわかんないから。
あたし、学級日誌の隅っこにシャーペンで。
『 好き 』
って、さかさまに書いてみる。
…読めた?
でも、それを見た先生。
あたしのシャーペンを奪って、また逆さ文字。
『 おれも 』
…やば。泣きそうだった、今。
ふたりで笑いながら、その文字を消す。
はじめてカップルらしい会話した…。
「先生…あたしね。もっと先生と、恋人らしいことしたい…」
困らせるって、分かってた。
だけど…これだけじゃ、物足りないよ。
先生はすこし考え込んだあと。
口角を持ち上げて、いたずらに笑う。
「春休み入ったら、うち泊まる?」
「…えっ!?」
思わず大きな声を出してしまって、慌てて口を閉じる。
お、お泊り…ですって…。
そんなことして大丈夫?
あたし、次の日の朝には息絶えてない?
「す、する。したい…」
「ん。じゃあ、決まり。…泊まりたいなら、それはやく書き上げて」
ハイ。
あたし、そっからもう、爆速。
光の速さで学級日誌を書いてね。
先生に「やればできんじゃん」って褒められていい気分。
…春休みがこんなに楽しみなの、はじめてかも。