「…じゃあ、わたしもう行くから」
そういって帰ろうとする飛鳥に俺は手を振って。
百瀬は、深く頭を下げていた。
…礼儀正しいとこがいいよな。
「百瀬、このまま帰る?」
「う、うん…」
ちょっとだけ寂しいと思った。
…俺、もうダメかも。
「先生…飛鳥さんって、あたしのこと偵察しにきたの?」
突然そんなことを聞く百瀬。
やっぱり不安だよな。
「いや? ただ百瀬がどんな人間か知りたかったんじゃない?」
「…それを偵察って言うんだよ…」
…違うんだけど、まぁいいや。
説明が難しい。
「じゃ、気を付けて帰れよ」
「うん。…あのね、先生、一個だけ聞いていい?」
背中を向けかけて、もう一度百瀬の顔を見る。
うわ…毎回、すごい破壊力。
何回見てもかわいいと思わせる力、すごいな。
「先生って、飛鳥さんのこと…まだ好き?」
なんだ、そんなことか。
俺さ、優しくないんだよ。
百瀬も例外じゃない。
だから。
「…さぁな?」
もうちょっと、俺のことで頭いっぱいにして待ってて。