あたし、教室を飛び出した。
飛鳥さんにはがつんと言ってやらないと!
急いで上履きから靴に履き替えて、校門まで走る。
「っ……あ、あの…!!」
勇気を出して声を出す。
ふたりが振り返って、飛鳥さんには微笑まれた。
くっ……大人の余裕ってやつ?
ムカつく…。
「な、なんの用…だったんですか」
「泰志にドライヤー返しにきただけよ」
「…ドライヤー?」
聞き返すと、今度は飛鳥さんじゃなくて先生が答える。
「付き合ってたとき、飛鳥の家に置いてってたやつ。結構性能良いから気に入ってたんだよな」
あ…。
そっか。
そりゃ、お互いの家行き来してたんだもんね。
家にモノを置きっぱなしにしていたって、なにも不思議じゃない。
でも変なのは…なんで、五年前に置き去りにしたであろうドライヤーを、今更返しに来たのかってことだ。
「ていうか。この子、噂の百瀬さんでしょ?」
「え…噂?」
「そうそう。可愛い顔してんだろ」
「ホントね」
なに…?
待って、ついていけない。
さりげなく褒められたし…。