「って、ごめん。勉強の邪魔したな」
「あ…いいよ。先生と話せてうれしい」
「俺も、百瀬見つけて嬉しくてさ」
…もう。
そういうの、勘違いするってば。
先生、ダメだよ?
あたしがドキドキさせる番なのに…。
未だに、先生には勝てないみたい。
スマホをしまって立ち上がった先生。
あたしの机に片手をついて、あたしの顔を見下ろす。
「…な、弥生ちゃん? こういうの、ご褒美あったほうが頑張れると思わね?」
突然の弥生ちゃん呼び。
良くない提案? それとも…本当に、あたしが喜ぶこと?
「うん…」
「だよな! じゃあさ…」
なに、言うのかなって。
ちょっと、息をのんで次の言葉を待つ。
先生はにっと口角を上げて、あたしの目を見つめなおす。
「今回のテスト頑張れたら、修学旅行で一緒に写真撮ろ」
「…え」
修学旅行。
テストが終わって、一週間後。
…その日から、あたしの血のにじむような猛勉強がはじまったのは、言うまでもない。



