「無理だね。弥生にそんな度胸あると思えない」
そう言ったのは、あたしでも、茉白でもないよ。
…乃蒼。ちょっと不機嫌顔で、登場。
こんな安い挑発に乗るなんてあたしもまだまだ子供だよね…。
「で、できるもんっ…」
「ホントかなぁ」
「見ものだな」
口々に茉白と乃蒼が言う。
バカにされてる…至極バカにされてる。
悔しい…。
絶対、絶対。
先生の心を物にしてみせるんだから。
「遊佐のことをドギマギさせられたらお前の勝ちな、弥生」
「…うん」
勝ちとか。
何と争ってんの? って感じだけど。
「せんせぇ、トリックオアトリート!」
「おかしちょうだい〜」
ふと、廊下に目を向ける。
…うん。
あれは、戦場かもしれない。
「負けてらんないね、弥生」
茉白、乃蒼。
応援してて。
あたし、負けない。