茉白が言うと、先生は苦そうな顔をした。




「アイツら、飛鳥の隣にいる男見えねぇのかな」


「意味ないって。高校生、そういうゴシップ好きだし」




今度は乃蒼。


うん…。
みんな、噂話には目がない。


先生の彼女だなんだ騒ぎ立てて、満足したらそれきり。




「…なんか、ごめんな。今日一日騒がしいけど」


「仕方ないですよ」




じゃあね、先生! と茉白が挨拶をして、あたしたちは先生に背を向けた。




「飛鳥さん、マジ謎だねぇ」


「何がしたいんだろうな」




ふたりの言葉を聞き流しながら、あたしたちは廊下の角を曲がる。




「先生、あれ彼女ー?」


「いつから付き合ってんの?」




……最悪。
よりにもよってこのタイミングで。



いや。
今日一日、どのタイミングで遭遇してもあたしの機嫌は悪くなってただろうけど。





「彼女じゃないし、付き合ってないからなぁ。ハイハイ、お前らも仕事戻れー」






そういって生徒たちを追い返した先生だけど。
……一瞬、あたしの方を見て顔を歪めたのは、どうして?