「百瀬は返事したんじゃないのか?」


「…してない。あたし、逃げちゃった」




情けないよね。
別にあれは、告白にびっくりしてとかじゃなくて…。


キスされそうになって、びっくりしただけなんだけど。
そのことは、あえて先生には隠しておいた。





「そうか…」


「先生、あたしどうしたらいいかな」




ずっと握りっぱなしだったシャーペンを置いて、先生と向き合う。


人生指導のお時間。





「まず、百瀬はちゃんと返事をしなきゃいけないな」


「うん」


「それは分かってるんだろ?」


「…うん」




もちろん。
このまま、なかったことになんて…。
乃蒼がかわいそう。





「次に、穂村との接し方だが…正直、高校生男子ってのは難しい」


「うん」


「お前らの場合を除いて」


「…え?」





あたしたちは別物?
そんなことある?





「穂村って、傍から見てる限り、百瀬には相当嫌われたくないんだよな」


「……」


「だから、いくら普通に接しても、嫌な態度なんて取らないさ。絶対」


「…絶対?」


「うん。約束する!」