「じゃあ俺らもう行くんで、また明日」




そう言って、乃蒼はあたしを連れ出してくれた。
ヒーローみたいだね。




部室棟はグラウンドの隅。
少し歩くと、静寂。




グラウンドで部活をしていた陸上部も、もう姿かたちない。




「……で、なに?」


「へ?」


「なんか用だったんじゃないの」




あ。
今の一瞬で完全に忘れてた。




「乃蒼くん、ご飯食べに行こ」


「…そんだけ?」


「そんだけって! 乃蒼はいやなの?」




あたしが乃蒼を見上げて首を傾げれば、乃蒼は「…いやなわけねぇけど」と口をとがらせた。


乃蒼くん、かーわい。
あたし、にまにましとく。




気づけばもう校門を抜けて、ふたりきりの夕焼け。



ご飯食べるなら、やっぱり駅前かなぁ。
最近、ファミレス行ってなかったしそこでもいいかもなぁ。




なんて、考えながら呑気に歩いていたら。