「なー、百瀬? ……弥生ちゃーん?」


「っ……!?」




無視を決め込んで掃除を再開しようとしてたら。
突然、はじめての名前呼び。



肩を震わせたあたしを見て先生は少し笑う。





「弥生ちゃん、拗ねんなよ」


「…それ、やめて」


「やめていいの?」


「……やだ」




支離滅裂。
わけわかんない。


でも…だって。
先生から名前で呼ばれるなんて、夢みたいで。




ていうか先生。
やっぱり、あたしの気持ち気づいてるでしょ?




「弥生ちゃんは素直だなぁ」


「っ……」




や、やっぱ、ダメかも。
ドキドキして死んじゃう…。




「弥生ちゃん、次はこっち綺麗にしてよ」




…ダメだ。先生、完全に面白がってる。



こんなの、いつまで経っても慣れるわけないよ…!





「顔真っ赤でかわいいな、ホント」





何も言い返せないよ、先生。
どこまでが嘘で、どれが本当?


それとも…全部嘘?
だとしたら先生、意地悪すぎる…。



いつも片想い頑張ってるご褒美、少しくらいちょうだい?