「はい、これ」
そういって差し出されたのは、コーヒー。
微糖。
…ちょっとだけ甘い、先生との時間。
あのとき。先生に恋したとき、確かに願った。
ちゃんと、もらえてるよ。
これでもじゅうぶんなくらいなのにね…。
ほんとう、わがままだ。
「せんせ、ありがと…」
「うん」
先生の手にはミルクココア。
先生が甘党なのは…いつだったか、聞いたことがある。
「なに? 百瀬、こっちも気になるの?」
「え?」
プルタブを開けて、ココアを一口含んだ先生。
その一部始終を、じっと眺めていた。
いや…。
飲みたい、とかじゃないんだけど。
先生は、なんだか勘違いしてるみたいで。
「ひとくち、飲む?」
不思議そうな顔で、あたしにココア缶を差し出してくる。
え? …え?
だって、それはつい数十秒前まで先生が口をつけていたもので…。



