【完】遊佐先生の甘い熱






「じゃあ、女子は4周、男子は6周!!」





気だるそうに走り出す生徒の群れ。
グラウンドに砂埃がたつ。



先生…ひどい。
陸上なんて聞いてない。




冬になったら体育館だし、それまで我慢かなぁ。





「こらぁ、百瀬!」





…ドキ。
先生に名前呼ばれるだけで、心がざわつく。





「歩くなぁ~」


「…歩いてないです、せんせ~」




ちょー低速なだけだもんね。
隣に並んで同じスピードで走ってくれる先生に、胸がキュンと鳴る。




「なんだよ。百瀬が敬語とかきもちわりー」


「な…失礼!!」





あたしが怒ると、先生は楽しそうに笑う。
ていうか…先生なんだったら、”敬語使いなさい!!”って怒るとこじゃないの?



変な先生。
…先生の、先生らしくないところも好きだよ。





「先生、もう疲れたぁ」


「はー? 一周走ってから言え!!」





先生は、たまに優しくない。
鬼みたい。…それでも、好き。