「…弥生?」
涙をこらえながら歩いていたら、突然前から名前を呼ばれた。
ゆっくり顔を上げると…。
「……乃蒼」
制服じゃない。
ラフなかっこうをした乃蒼が、立っていた。
そっか…乃蒼は結構前に先に下校したんだもんね。
「どした? 弥生」
「別に…」
「泣きそうだけど」
乃蒼にはなんでもお見通し。
隠せない…。
「学校で嫌なことあった? …あー、てか、遊佐か」
まだ制服を着ているあたしを見て、泣きそうな原因が遊佐先生にあると突き止めたらしい。
洞察力の鬼だね…乃蒼。
「…とりあえず、うちくる?」
乃蒼からお誘い。
この近くだっけ…。
先生と一緒に帰れなかった悔しさ。
あの後輩の子への嫉妬。
ぐちゃぐちゃで、もう何も考えられなくて、あたしは頷く。
乃蒼の背中を追って歩きながら、まだモヤモヤを抑えきれずにいた。



