「なに笑ってんだ? 変なやつ」
「ふふ…なんでもない」
先生にはわかんないんだろうなぁ。
あたしが、こんなちょっとしたことで浮かれちゃう理由も。
先生のこと…どれだけ好き、とかも。
「あ…そのクマ」
ふと。
先生が、あたしのカバンを見て言った。
先生にもらったクマね。
ちゃんとつけてるよ? あたりまえでしょ。
「これ気に入ってる」
「…俺だと思って大事にするんだぞ!」
先生だと思って…?
やだ、そんなこといわれたら…。
これから、このクマを見るたびに顔赤くなっちゃうじゃん…。
「…やっぱり、家に置いてく…」
「なんでだよ…。あーあ、俺、傷ついた!」
わざとらしく頭の後ろで両手を組んで、地面を蹴ってキャスター付きのイスを転がす先生。
傷ついてないくせに…。
「じゃあ、なにしたら心の傷、治せる…?」
少し遠くに行った先生に問いかける。
先生は、ちょっとだけ考えて、すぐ口角をあげた。
「俺の身代わりを、生涯大事にすること! 学校にもつけてこいよ」
先生の身代わりって…このクマ?
うん…一生の宝物だよ。
先生。
身代わりじゃなくて。
…あなた自身がほしいです。