「おまたせぇーっ」
慣れない浴衣で小走り。
神社の鳥居の下。
見慣れたふたりを見つけた。
「弥生かわいーっ」
真っ先に褒めてくれたのは茉白。
うん、えらい。
乃蒼は…褒めてくれない。えらくない。
「弥生のくせに」
とか、ツンケンしちゃってね。
きっと、心の中ではかわいいって思ってくれてるはず。
「暑いねえ」
ハンディファンを取り出して風を浴びる茉白。
あたしも対抗するね。
扇子で。
「まって! 弥生、まさかの扇子?」
「いいでしょ、意外と涼しいんだよ」
「いいけど…手疲れない?」
疲れるよ。超疲れる。
人混みで扇子は向いてないかも。
「これね。100円ショップで300円だった」
「100円ショップじゃないじゃん」
そんなくだらない会話をしながらね。
鳥居をくぐった。
ズラっと並んだ屋台に、人がたくさん。
美味しそうな匂いがあたしのお腹を空かせる。