夏休みに入ってから、もう2週間が経った。



日に日に暑さは増して、家の中にいるのに熱中症と隣り合わせ。




アイスを食べてごろごろするだけの毎日…。
はぁ、先生に会いたい…。




「ちょっとキツくするよ」




お母さんにきゅっと腰を締め付けられて、「うおっ」て可愛くない声が出た。
何年経っても慣れない…。



そう。
今日は夏祭り。



待ちに待った…といえば、そうかも。
でも、本当なら先生と行きたかったなぁ…。




「母さん、俺のワックス知らない?」




お兄ちゃんがそんなことを言いながらリビングに入ってきた。
彼女もいないお兄ちゃんは、友達と集まって夏祭りにいくらしい。



…それは、あたしも一緒か。





「知らないなぁ。お父さんじゃない?」


「えー…なんですぐ俺のもん使うんだよ…」




お兄ちゃん、撃沈。
お父さんってね、プライバシーとか、パーソナルスペースとか、そういうの胎内に置いてきたタイプ。



だからすぐ人のもの使っては、どこかに置いたまま存在ごと忘れちゃうんだよね。




「てか…弥生。それ、新しく買ったやつ?」


「うん!」





かわいいでしょーって、くるくる。
お母さんに「着崩れるからあんまり動かない!」って怒られた。





「ふーん。いいじゃん」




いつも褒めないお兄ちゃんが、そんなふうに笑うのは。



きっと、誰よりも今日を楽しみにしてたからだろうな。