「それで、本題に入る前に…」
そうだ。
今日は、先生に呼ばれてここに来たんだった。
先生はおもむろに冷蔵庫に手を伸ばして…。
中から、缶を取り出した。
「はい。いつもの!」
「っ…」
ダメ、だよ。
馬鹿みたいに喜んじゃう。
机の上に置かれたのは、あたしが大好きな缶コーヒー。
「買っててくれたの…?」
「今日は前もって来ることがわかってたからな!」
「…うれしい」
今日の缶コーヒー。
いつもより特別に見えて、飲みたくない…。
このまま飾っておきたいよ。
「せっかく買ったんだから、今ここで飲んでよ」
なかなかプルタブを開けないあたしに先生は苦笑いをして、代わりに缶コーヒーに手を伸ばす。
「俺がいないとダメだなぁ、百瀬は!」
先生はきっと、冗談のつもりで言ったんだよね?
でも…それ、本当だよ。
先生がいないとダメなの。
もう、ひとりじゃ生きられないの。
だから…恋人として、家族としてそばにいてほしい。
ねえ、先生…。
あたし、まだまだ欲張りになる。
こわいよ、これ以上好きになるのが…。
もう今は、彼女通り越してお嫁さんになりたいって思っちゃってる。
飛鳥さんの結婚の話題を聞いたから余計、鮮明に。
「それでな。明日の体育なんだけど…」
先生の話を聞きながら。
あたし、彼氏として隣にいる先生のこと想像した。
変態でごめん。
厄介な生徒でごめん。
好きって思われてたら…迷惑?
先生。
迷惑だと思われても。
もう、抑えられそうにないよ…。



