10月になると学園祭があるけど、私たち3年生はほとんど受験勉強で忙しい。

 そして、私は相変わらず苦手な数学の補講を受けている。


「まったく、小春は」

 数学の教科書を持って移動しているとき、思い出してぶつぶつと声がもれた。

 あのアイスを食べながらの公園デートで、タカの口もとについたアイスをカケルがなめ取って、あげくそのままキスをするっていう絵にしろだなんて。

 恥ずかしすぎて誰にも見せられないよ!


「秋月」

 カケルとタカの妄想をしていたら背後から声をかけられて、びくっと体が震えた。


「い、伊吹くん」

 彼は真顔で背後に立っていた。


「ぼうっと突っ立ってると入れないんだけど」

「あ、ごめんね!」

 慌てて避けると彼はすっと手を伸ばした。


「先に入れよ」

 伊吹くんの紳士的な態度にじんと胸が熱くなった。

 今の変なところを見られていたのは恥ずかしいけど。