良い人ぶりながら、連絡先交換に成功。

嬉しい反面、俺とホットケーキを置いていくまどか先輩を見ているのが、辛くてたまらない。


このあと俺は、まどか先輩と一緒に部屋を出た。

エレベーターに乗り込んで、着いたのは1階のロビー。

道路に面した自動ドアの前まで、俺はお見送り。


「まどか先輩、気をつけて帰ってね」


「帷くん、ホットケーキごめんね」


「いつでも食べられるデザートとして、冷凍でストックしておけるし。ほんと、気にしなくていいってば。また時間ができたら、演技練習も付きあってね」


「本当にありがとう、帷くん!」



「じゃあね」と俺に微笑み、慌てて走り去ったまどか先輩。


この時

良い人ぶることに精一杯だったせいで、俺は気づけなかったんだ。


カシャ!


俺とまどか先輩の密会現場が、誰かのカメラに収められていたことに。