欲望に支配された俺。

愛おしい人しか心の瞳に映らない。


顔を真っ赤に染めるまどか先輩が

すーっと瞳を閉じた瞬間


――俺を受け入れてくれた。


この上ない幸せに、ズブズブと溺れてしまった。



自分の唇を、まどか先輩の唇に押し当て


――キス。



……するつもりだったのに。



カランカランっ!


いきなり、部屋中に響いた金属音。


お互いの肩が飛び跳ねるくらいの、高音で。

キッチンから床に落ちたボウルは、まだカラカラと揺れていて。


――どうしよう、やりすぎた。


キス未遂を後悔をしたのは、音が無くなった後。

目をパチパチさせながら固まっているまどか先輩を、瞳に映した直後。



――マズい。

――まどか先輩に、嫌われたくない。


焦った俺は、慌ててハイテンションキャラを取り繕う。