「借り物競争が始まったみたいだな」
東条くんは伸びをしながら、ひょいと立ち上がった。
私は相変わらず、地面に腰を下ろしたまま。
『次のレースには、高瀬帷くんが登場します』
グラウンドから流れてきたアナウンス。
「キャー!」
「帷くん、カッコいい!」
離れた校舎裏まで、女子達のはしゃぎ声が聞こえてくる。
バンとピストルが鳴った。
私が座っているところから、全くグラウンドは見えない。
でも、まるで瞳に映っているかのよう。
帷くんがグラウンドを駆ける姿が、浮かび上がってしまう。
だって……
『帷くん、早いです。おーっと、平均台の上を歩かないのか? 側転です。綺麗な側転決めながら、平均台をクリアしました。次は跳び箱ですが……跳び箱に片手をついてジャンプ! 一回転だ。華麗に決まった。完ぺきな着地です! 1年の高瀬帷くん、なんという身体能力でしょうか』
放送部の子が興奮しながら、帷くんだけをマイクで実況しているから。



