はぁ~、聞きたくなかったなぁ。
サヨナラの直前に、他の男の名前なんて。
ちょっと残酷すぎない?
口角あげて笑顔作るの……
もう限界……
俺の顔から、一切の笑顔が消えた。
敗北感が心臓を斬りつけてきて、苦しくてたまらない。
唇を思いっきりかみめ、悲しみをおし殺す。
モデルの俺が演技を始めたのは、このためだったのかもな。
ベッド横に進むと、俺はまどか先輩の瞳に手のひらを置いた。
俺の声色とは全く違う低くてワイルドボイスを、まどか先輩の耳に吹きかける。
「俺はここにいる。だから、安心して寝てろ」
満足げな表情をうかべたまどか先輩は、また夢の世界に戻っていったようだ。
俺の声、松岡先輩に似てた?
夢の中でも、松岡先輩に優しくしてもらいなよ。
これで本当にバイバイ。
じゃあね、まどか先輩。
俺はカーテンの外に出た。
大好きな人を瞳に映すことなく、カーテンを閉める。
そしてこの時
大好きな人への愛情も、心の奥の奥、深い闇の中に閉じ込めた。