ステラに怒りなど湧くはずはなく、完全に被害者のステラへの慈しみが増しただけだ。 ステラを脅し続ける顔の見えない相手に、ジオはひんやりと冷たい感情が湧いた。 (病気の母親を人質にして 異国に身代わりに嫁がせて? 夫を暗殺しろって脅した? それが本当に、人間のやることなのか?) 人間の未知なる悪意を知ってジオは腹の奥が奇妙に冷たくなった。 こんなに腹の底から凍るような怒りを覚えるのは初めてだ。ジオはステラを抱えたまま、すぐに立ち上がった。 「ステラ行こう」