泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─



ステラはバルコニーの柵を掴んだまま、ずるずる足から力が抜けた。

柵の前にべったり座り込んでしまう。崩れ落ちたステラの肩に赤い鳥が乗ってきた。


「でも、でもでもでも」


ステラの震える肩の上で、赤い鳥はただじっとしていた。


ゴンゴンと勢いよくぶつけた額は痛くて、頭の中は重くて鈍痛がする。ステラは身体を重く蝕む苦しい想いを吐き出した。


「お母さんはどうすればいいの?!

私が暗殺を止めて、私が罰を受けるのはかまわない。ジオ様を殺すなんて私にはできっこない。

でもお母さんが死んじゃったら嫌……嫌なの」