泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─


年の頃は10歳にも満たない少女を、ジオは「マリ」と呼んだ。以前ステラにも花冠をくれた少女だった。


「げんき元気!王様ともう一人で森の外に行かないって約束した!」

「うん、約束。絶対な」

「はーい!」


ステラは「マリ」の単語には聞き覚えがあった。


(あの女の子が、マリ?)


キドナ国を襲った仮面の男が「マリを返せ」と一言言ったことをステラは覚えている。


(カルラ国に突然襲われたなんて報道だったけど……もしかして、本当はキドナ国があんな小さい女の子を攫った……とか)