手持ちの猛毒はもうない。「ジオを殺す手段がないから暗殺できない!」という正当な理由を持つステラは、ちょっぴり軽い気持ちで、ジオの隣を歩いていた。
石作りの家々がひしめく間の階段を下っていると、急にステラの顔に冷たい風が吹いた。
「ひゃ!」
ステラが驚いて身体を引いてジオの肩にぶつかる。ジオはステラが階段を踏み外さないように肩を抱いて笑った。
「これが、町刻みの魔法。レオの風魔法かな?」
ステラが壁を覗き込むと、石壁には字とは言えない文様のようなものが刻まれていた。そこから冷たい風がびゅっと飛び出す仕組みのようだ。
「こんな感じで町のあっちこっちに魔法が刻まれてるんだよ」
「ど、どうしてですか?」
「別に意味なんてないよ?」
紫色の瞳を細めてジオは爽やかな風を背負って笑う。
「遊んでるだけ」



