何の罪もないジオに毒を盛ろうなんて非道だ。やりたくない。逃げてしまいたい。だが、ステラの中で母の声がする。
『いいかい。ステラ、お前が幸せならそれだけでいい』
急に他国に嫁ぐことになった娘にステラの母は何度もそう言い聞かせた。
(お母さん、私だってお母さんに幸せでいて欲しい)
ステラは始まったばかりの恋より愛しい母を優先した。震える手で水筒に毒を入れ、目に涙が溜まる。
ジオはとても優しい。
でも、ステラは母を捨てられない。
(お母さんを助けたいの……)
「ステラ、大丈夫?疲れちゃった?」
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