恐るべき告白

 突然の告白をされても私は驚かなかった。彼が私を好きなことは薄々わかっていたから。だってパーティーが始まってからずっと、私を見続けていたもの。
 私が衝撃を受けたのは、彼が仮面を外し自分の正体を話し出したときだ。
「僕の名はロミオ。モンタギュー家の息子ロミオだ」
 美しい面立ちの青年は確かに、そう言った。その言葉を聞いて、私は動揺した――ちょっとちょっと、ちょっと待ってよ! あなたがロミオって、それ本当なの?
 深呼吸して気持ちを鎮めようとしたけど、上手くいかない。私は震える声で言った。
「よく聞いて。私はジュリエット。私の名前はジュリエットなの。ねえ、その意味、わかるよね?」
 私が言っている意味が通じたようだ。ロミオの顔は蒼白になった。
「ジュリエットって……まさか、あの、キャピュレット家の娘の、ジュリエット?」
 私はコクンと頷いた。相手も、それに合わせて小さく頷いた。
「よりによってキャピュレット家の娘を好きになってしまうなんて……信じられないよ。愛の告白をした相手が、キャピュレット家の娘だなんて、思いもよらなかったよ」
 そう呟いたときのロミオは、これ以上ないくらいに絶望的な表情だった。見ているこっちが切なくなるほどに。
 そのとき私は、自分がロミオを深く愛してしまったことを悟った。愛しい彼の口から悲し気な呟きが漏れる。
「こんなに愛している女性がモンタギュー家の仇敵キャピュレット家の娘だなんて……悪夢だ。これが、何かの間違いであってくれたら」
 ロミオは潤んだ瞳で私を見つめた。私も彼を見つめ返し、涙声で呟いた。
「ねえロミオ、どうしてあなたはロミオなの?」 
 ロミオは答えなかった。答えたくても答えようがない質問だった。
 私たちはイタリア北部のヴェローナで生まれた。ヴェローナは二つの名門貴族が街の支配をめぐって長年争っている。その一つが私の実家、キャピュレット家。もう片方がロミオのモンタギュー家だ。両家の闘争は数代前から続いていて、互いを仇敵として憎み合っていた。
 その家の人間同士が交際するなんて絶対にありえないことだった。親兄弟はもちろんのこと、親戚からも反対されるに決まっている。絶縁とか勘当とか、普通にありえるくらいの大問題なのだ。
 もしも、そうなったら、どうしよう?
 自分が家を追い出されるなんて、私は今まで考えたことがなかった。
 そう、今この瞬間まで、そんなこと一度も考えたことがなかったのだ。
 でも今、私は家を出ていく自分の姿を想像している。
 私は実家を出て、愛しいロミオと二人で生活するのだ。
 誰にも邪魔されない、二人きりの生活の様子が、私の心に浮かんで見えた。
 それは夢のような暮らしだった。
 突然ロミオが私を抱きしめた。私は抵抗しなかった。
「もう我慢できない。二人きりになろう」
 誘いの言葉に、私は沈黙で答えた。