「一緒にいても面白いと思うけどなぁ」
「疲れる」
盛大な溜息をついて、リオンは乱された髪を直しながら漸く訪れた静寂に目を閉じた。
フィンが開けた書斎では、荷物がまとめられていた。
本棚は空っぽになり、魂を入れていた鳥かごもない。
全てはリオンの、黒いアタッシュケース一つの中に小さくなって詰め込まれている。
リオンは荷物をキッチンへと移動させると、靴を履き、いつもの指定席に腰を下ろし、冷めてしまった紅茶を一口啜る。
その間にチェスは荷造りを始める。
といっても、持ち運ぶ物は100年前から変わっていない。洋服もマグカップも食器も、もうリオンのバッグの中なので、ただ一つの物を、持って歩く。
リオンが紅茶を飲み終わるまでの間、チェスはその赤い宝箱を眺めて、問いかけた。
「何処に行くの?」
「アイツと逆の方向」
「何処に行ったかわかるの?」
リオンは嫌そうに頷いた。
本来死神達は気配は消して歩くことが多いが、今フィンは気配を消さずに移動しているらしい。
精々真逆に行くことだな、とどこかからフィンのニヤ付いた笑い声が聞こえてきそうだ。
「アメリカに戻る気らしいな」
不愉快そうに、紅茶を啜る。


