淹れ終わった珈琲を、フィンは美味しそうに啜りながら、チェスと他愛の無い話をした。
リオンと出会ったころの話を面白おかしく語り聞かせ、時たままた光線が飛んできては穴が開いて。
閉めるとはいえ、最後にこんなにも穴を開けるのもどうかと思うと、チェスは一人溜息を漏らす。
「さてと、元気そうな弟子とその友達も確認したことだし、俺は行くかな」
珈琲も飲み終わり、一通りリオンを苛めた所で、フィンはそういうとカップを置いて大きく伸びをした。
「フィンさんは何処に行くんですか?」
「んー…別に決めてないから二人についていこうかなーって思ってたんだけど」
「付いてくるな」
書斎からリオンの明らかに不愉快そうな声が聞こえた。
ドア越しの声にフィンは「えい」なんて掛け声とともに何重にも掛けられた鍵を魔法で簡単に外してドアを開けた。
二人の魔術が五分五分なのは昨日の魔術大会で嫌と言うほど知った。
「俺が居ないからって夜泣きすんなよ」
「誰がするか、入ってくるな」
「じゃあね、チェス君」
「あ、はい。お元気で」
にこやかな笑顔とともに、フィンはリオンの頭をぐしゃぐしゃと撫で、チェスの頭をポンポンと軽く叩いてから店へと出る。
白い外套(マント)と髪が、微かに揺れる。
フィンがドアを開けると、聞きなれたベルがいつものように鳴る。
一度だけ振り返り、書斎へと向けて声が響く。
「またイジメに行くから覚悟しとけよ、リオン!」
そう言ってパタン、と扉は閉まった。
それと同時に訪れる、静かなひと時。


