「そんなの、まともな人間がいない所為だろ?俺たちの使い魔盗む理由にならねぇよ」
フィンの言葉を、最後まで話を聞け、というニュアンスを含ませ片手で制し、クリスは言葉を続ける。
「人間の生き死にはあたしだってどうでもいいわ、ただこのままで行けば、数百年後には悪い方へ転がってく。心の優しい人はたいした理由もないまま殺され、未練を残して死ぬ所為で浮かばれなくなる。そうなると、転生できる魂は未練なく死ねた、一握りの心の優しい人と、改心したけど沢山の危険因子を含んだ人。これがくり返されていくと危険因子しか残らなくなる」
「無理が通れば道理引っ込む、っていうやつか」
「いい方向へ転がしたいなら、二人にはもうこれ以上余計な不の魂を作らずに他の死神と同様、浮かばれない魂を食べるか、成仏させていってもらいたいのよ。最近悪魔や死神の数も減って、仕事が滞ってるの。魂の量が多すぎて、処理し切れなかったりね。悪い方へ転がしたいなら、今のままでもいいけど、でも」
言いながら、クリスは何の音もしないこの恐ろしい非現実の片隅で、ポツリと寂しそうに呟いた。
「人間以外の、動物や植物が犠牲になるのは可哀想だわ」
「神様って、どうにか出来ないんですか?人の心を正すとか…」
思わず口を開いたチェスの言葉に、クリスはただ、小さく首を横に振った。


