「神と言うのは人間の奴隷。あちこちで『助けてくれ』『助けてくれ』と願われ、自分の思い通りにならなければ憎まれ、思うように行けば感謝される。人間の良いように使われることを役目として生まれた、奴隷、それがあたし、クリスと言う名の神」
その言葉を聞いて、それを継ぐかのように、腕を組んで話を聞き流していたリオンが、いつも店で話すように、抑揚の乏しい声で説明を続ける。
「他の動物とは違い中途半端に脳が発達してしまった人間が作り出した妄想上の生き物、それが神。名前をつけることで親しみを持つことが出来、そこに自分の都合のいい解釈を…例えば毎日どこかの方角へ祈り続ければ願いが届くだとか、お百度参りなんかもいい例だな、それをつけたし、崇拝する。この行為は、本やテレビに出てくるキャラクターに祈りを込めることと同じことだ。何の効果も齎(もたら)されない」
「現に、百度参りって言うのは最初は百日間参拝する物だって決めてたのに、百日も参ってられないヤツの為に百回参ればいい、なんてルールに変えられてるんだぜ。それを変えたのは神じゃなくて、人間なんだよ。つまり、個人個人の妄想でしかないから形があやふやで、個人が想像している神の姿形もバラバラになってんだよ。目に見えないことをいい事に、人間達が勝手気ままに作る所為で」
そうそう、と赤い髪が首が動くのにつれて、揺れる。
「本当の神は何もしないの。ただ、人々の生きる様を見て、世界の均衡を見てるだけ。それが仕事なの」
「そうなんですか…」
「で」
一通り、何故神に「sacrifice」がつけられているのかと言うチェスの質問が答えられたところでリオンが早々にその話に終止符を打ち、本題へと向かおうと口を開く。


