ワケアリ(オカルトファンタジー)




狙っていた心臓とはまた別の、肩口辺りに当たった銃弾は、ラシェルの肩の骨や筋肉や血管や筋を無視し、貫通していった。


普通なら叫び声を上げるほどの激痛。


しかしラシェルは無言のまま、虚空を見つめていた。


脳を貫かれて、既に死んでいたのだ。


エルヴィスは、答える。



「ラシェルも悪者だったんだね、お父さんが退治できないなら僕が退治しなきゃ」



グラ、と身体の重心がずれ、徐々に傾いたその人間だったオブジェは次の瞬間には強かに顔面を打ちつけて、口の中に溜まっていた血液の塊をゴポ、と吐き出し、倒れた。


すぐに事切れたラシェルを見て「たいしたこと無いや」とエルヴィスは呟く。


新しいヒーローの誕生を喜ぶのも束の間に、床で血だらけになって倒れている、もう二度と動くことの無いだろう両親を見つめた。


そして、拳銃をテーブルの上に置いて、ラシェルの持っていた果物ナイフを取り上げると、死んだ両親の胸に突き立てて、ズブズブと切込みを入れた。


切りづらそうに、たまに骨に引っかかって動かなくなるナイフを一生懸命に押したり引いたりして、その中に手を入れ、それらしいものを発見すると丁寧に取り出す。


生暖かい温もりが、心地よいようで、水気を含む、まるで暖かい泥沼に手を突っ込んでいるような、奇妙な感覚。


肺を掠め、間違えて取り出した胃を、一度取り出して胸の上に置いて、空間の空いたそこからまた探ったその先。


表面を滑り気で覆われた赤黒いそれは、暖かくツルツルと光って、幾つかの太さもまばらな血管を這わせ、少し弾力があって、取り上げた手の平にしっとりとした重さを感じさせた。


心臓。


両親のそれを取り出したエルヴィスはその二つを大切に両手に抱えて自分の部屋へと走っていくと、先日父親から貰った宝箱へと詰め込んだ。


大切な両親の、大切な物。