「……は?」
「盗まれたと言ったんだ、夕方に来た若い女に」
「ちょ、ちょっと待って、何平然と言ってんのさ!気付いてたの!?」
「気付くさ。あの指輪の気は強すぎて移動したらすぐにわかる、………バカにでもしてるのか」
不機嫌そうなリオンの顔。
「じゃなくて!気付いてんのに何で止めなかったんだよ!」
「止める必要が何処にある?どうせ金など貰わないのだから」
焦るチェスに対して、リオンは意にも介さずに紅茶を啜り、本を読んでいる。
だからって万引きを許す店主が居てどうする。大人として問題あるぞ。
リオンの言葉は間違っては居ないが、チェスはそう思わずにはいられなかった。
紅茶を飲む、小さな音と、盛大に吐かれる溜息。
「だからあの時、珍しく扉を開けたの?」
「人間の驚きと、恐怖と絶望に歪む顔は何よりのご馳走だと思わないか?チェス」
「……リオン、また腹黒い顔してるよ…」
色白の美貌には、またあの笑みが口元に張り付いていた。
チェスは一言呟いて、空になりつつある紅茶を淹れるべく、台所へと向かった。
そんなものより身になるものを食べなよ、と身長の割には細い身体を眺め漏らしながら。
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